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「鼻プロテーゼは術後の違和感が心配」「触られたらバレてしまうのでは?」と不安に思う人もいるでしょう。実は、鼻プロテーゼは、意外と違和感が少ないもの。鼻プロテーゼが入っている感覚を、術中から完成まで経過を追って医師が解説します。
鼻プロテーゼをすると、どのような感覚がするのでしょうか。〝手術をしたことによる痛み〟〝人工物が入ることにより本人が覚える違和感〟〝触ったときの違和感〟がないか、気になる人もいるでしょう。副作用やリスクでなくとも、痛みや違和感は避けたいもの。鼻プロテーゼ後の感覚について、術中・術後すぐ・ダウンタイム期間・完成後など、経過を追って紹介します。
鼻プロテーゼの治療は、単独であれば局所麻酔下で行われることが多いです。術中は麻酔が効いているため、引っ張られるような感覚は残存しますが、痛みはほとんどありません。眼窩下神経のブロック麻酔、予定挿入部と鼻腔内の切開予定部に局所麻酔を注入する際に、チクリとした痛みがあります。事前に注射する部位を冷却し表面麻酔を塗布することで、針を刺す痛みを緩和することができます。痛みの感覚には個人差があるため、痛みに対する不安が強い人は、局所麻酔前に笑気麻酔や静脈麻酔を併用するとよいでしょう。例えば、「笑気麻酔」は吸入式でふわふわとした感覚になり、「静脈麻酔」は点滴で眠った状態になります。
術後、麻酔が切れると「腫れに伴う一時的な痺れ」や「鈍痛」があらわれます。痛みの感覚には個人差がありますが、処方の痛み止めを内服することで、生活に支障がない程度に治まることが殆ど。痛みが強いときは、保冷剤などで断続的に額を冷やし腫れを予防することで緩和されます。
鼻プロテーゼ術後のダウンタイム期間は約2週間。ダウンタイム症状には、痛み、腫れ等があります。痛みのピークは数日。数日してから痛みが強くなる場合や赤みが引かない、熱を持っている場合は、感染の疑いがあります。感染を放置すると皮膚の壊死や、あらぬところからプロテーゼが飛び出してくることがあるので、すぐに受診しましょう。術後3~4日は鼻に違和感がありますが、腫れとともには1~2週間で落ち着いてきます。
おおむね完成は2週間となります。
鼻プロテーゼが適切に骨膜下に挿入されていれば、完成後は違和感が殆どありません。プロテーゼが誤って皮下(骨膜の上)に挿入されたり、折れた状態で挿入されていたりすると、ぐらぐらしたり、ずれたり、曲がったりするので、凹凸を触れることがあります。
シリコンプロテーゼは軟骨に似た医療材料です。正しく骨膜下に収まっていれば、骨膜は固く安定しているため骨の感触と比べて違和感はありません。段差もなく、動かないため、医師でない限り触ってもわからないでしょう。ただし、皮下に入ってしまった場合、触れたときに段差を感じ、ぐらつくことがあるため、違和感を覚えます。
鼻プロテーゼは、軟骨と同じ硬さで作られています。このため、骨膜下に挿入された鼻根部(鼻の付け根、鼻骨の上)は骨と同じように硬くなりますが、その尾側の鼻背の軟骨(外側鼻軟骨)上に挿入された部分は軟骨と同じようにしなり、動きも出るため、きわめて自然になじみます。さらに、適切な「プロテーゼの素材」や「プロテーゼの形と高さ」が選択されていることが、「鼻プロテーゼ挿入後に馴染む」ためには必要です。
プロテーゼの素材には、「シリコン」と「ゴアテックス」があります。「シリコン」は、適度な硬さがあり、シャープなラインをつくるのに適しています。「ゴアテックス」は心臓の手術にも使われる安全性の高い医療材料。ゴアテックスはシリコンよりも柔らかい素材で、加工しやすく軟骨に馴染みやすいため、もともと曲がっている鼻、鼻根部から眉間にかけてのなだらかなラインの形成に適しています。
鼻プロテーゼの形には、I字型とL字型などがあります。主流であるI字型プロテーゼは、眉間、目と目の間(鼻根)、鼻筋に入れることで、自然なラインを形成。L字型プロテーゼは同時に鼻先を持ち上げることができるので、ツンとした鼻先を形成できます。しかし、内側からの圧迫により鼻先の皮膚が薄くなり、プロテーゼが透けたり、触れたりすると、異物感を感じることがあります。また、日本人の鼻はもともと鼻根部が低いため、鼻根部を高くしすぎると整容的な違和感を生じます。
人工物を挿入すると生体は防御反応を起こし、被膜形成を起こします(カプセル化)。鼻根部(鼻の付け根)の鼻プロテーゼの挿入箇所は「骨膜下」。プロテーゼを骨膜下に挿入することで、プロテーゼ周囲の被膜形成が硬い骨膜下で生じるため、体表から触れにくくなります。皮下に挿入した場合、被膜形成を生じても、鼻根部の皮膚は薄いため容易に体表から蝕知されます。また、固定性に欠けるため、ぐらぐらしてしまい、違和感が残存することがあります。
鼻プロテーゼは「鼻を高くしたい」「鼻筋を通したい」という悩みを解決する有効な手段ですが、適切なプロテーゼのサイズや形は、素人にはわかりにくいもの。高過ぎる鼻や尖り過ぎた鼻は、「違和感」や「飛び出し」などのトラブルを招きます。クリニックのホームページやSNSで〝ご自身に似た症例を多く扱っていること〟を確認し、事前カウンセリングでは、違和感やトラブルの少ない「自然な変化」を提案してくれるクリニックを選びましょう。
鼻プロテーゼに関するよくある質問にお答えします。
答え
鼻プロテーゼの術後は麻酔が切れると鈍痛があらわれますが、数日で治まります。触れても自他ともに違和感はありません。異物が入ったことによる違和感を覚えることがあり、2週間程度で治まります。
答え
鼻プロテーゼはご自身でもわからないくらい自然な感触です。
答え
鼻プロテーゼにより皮膚感覚がなくなることはありません。ただし、術後暫くは腫れのため皮膚感覚が鈍くなることがあります。
今回は以下の内容について説明させていただきました。
・鼻プロテーゼはどんな感覚がする?
・鼻プロテーゼを触ったときの感覚
・鼻プロテーゼに違和感が少ない理由
・鼻プロテーゼは自然な変化を提案してくれるクリニックがおすすめ
鼻プロテーゼは手術のためダウンタイムはありますが、正しく骨膜下に挿入されていれば違和感はありません。術中は麻酔が効いているため、痛みはなし。術直後、麻酔が切れると一時的な痺れや鈍痛があらわれます。ダウンタイム期間の症状は、痛みのピークが数日、腫れは1~2週間程度が目安となります。完成後の違和感は殆どありません。触ったときの感覚も、適切な位置に挿入されていれば本人でもわからないほど。過って皮下に挿入されると、ぐらぐらしたり違和感を生じたりします。鼻プロテーゼ後に違和感が少ない理由は、「プロテーゼの素材」の柔らかさが軟骨に近く、「プロテーゼの形と高さ」が適切であれば、「骨膜下に挿入された鼻プロテーゼは周囲に組織に馴染む」性質があるため。鼻プロテーゼは高さや形、挿入位置の誤りにより、違和感を生じることもあります。治療をするなら、自然な変化を提案してくれるクリニックを選びましょう。