2017年1月31日
皆さんは、『脱毛をするとワキガになる。』『ワキガがひどくなる。』というウワサを聞いたことがありますか?
実は、クリニックにもこういった質問が寄せられることがあります。
結論からいうと脱毛をしてワキガになったり、ワキガがひどくなるということはありません。
このウワサは、汗やニオイを過剰に気にするあまり、精神的な不安やストレスから引き起こされてしまう『精神性発汗』が関係していると考えられます。
こういった脱毛とワキガの関係性を今回はワキガの仕組みをもとに解説していきます。
脱毛を検討している方は是非参考にしてみて下さい。
ワキガの正式名称は腋臭症(えきしゅうしょう)と言い、汗をかくことにより、『汗臭い』とはまた別の強いニオイを発する体質のことです。
人は誰しも汗をかきますが、生まれつきであったり、食生活や生活習慣により汗の成分や汗の量が異なってくるため、ワキガになることがあります。
汗は汗腺から出ており、毛は毛穴から生えてきている。汗や毛穴の仕組みを見てみるとまったく関係ないようなこの二つが関連付けられてしまうのには、このような理由がありました。
脱毛の仕組みをあまり知らない方は、『毛穴をなくして毛を生えなくする』と思っている方も多いようですが、結論からいうと脱毛をして毛穴が閉じるということはありません。
毛がなくなることにより、毛穴が小さくなることはありますが毛穴が閉じてしまうということは全くのウソです。
そして、たとえ毛穴がなくなってしまったとしても汗腺がある限り、汗は流れるので、ワキガの解決にはなりません。
脱毛の刺激によって汗の量が増えることはありません。
このウワサは、『精神性発汗』が関係していると考えられます。「脱毛をしたことによって汗が増えたんじゃないか?」「みんな自分を汗臭いと思っているのではないか?」…など汗やニオイを過剰に気にするあまり、精神的な不安やストレスから引き起こされてしまうのです。
そもそも、ニオイが発生してしまうのかというと、『誰しもがかく汗』と『皮膚の上に常にいる常在菌』に関係します。
汗は『汗腺』という汗を出す腺から皮膚表面に出てきますが、この汗腺は2種類あります。それが、『エクリン腺』と『アポクリン腺』です。『エクリン腺』と『アポクリン腺』はそれぞれ違う役割があり、それがワキガの仕組みにもつながってくるのです。
エクリン腺から出される汗はほとんどが水分です。(詳しく見ていくと水分以外の成分も含まれていますが、ほとんど水分です。)
そしてこのエクリン腺は毛穴とつながっていません。毛穴よりももっともっと小さい穴からエクリン腺から出る汗が流れてきます。
このエクリン腺は体中にありますが、このエクリン腺がワキガの原因であることはほとんどありません。(水分以外の成分も含まれているため、『汗臭い』の原因になる場合はあります。)
一方、アポクリン腺から出る汗には、脂質やタンパク質、糖質やアンモニアなどの成分が多く含まれています。
このアポクリン腺から出る様々な成分が含まれている汗は無臭であるとされていますが、その汗が皮膚上に分泌されると、エクリン腺から分泌された汗と混ざり、それが皮膚の常在細菌により分解され、ニオイを発する物質が生成されるのです。
アポクリン腺はワキや性器周囲、肛門、乳首や耳の中と決まった部位にしかない汗腺で、欧米人には、このワキガ体質の人の割合が多いことや体臭もフェロモンのひとつとして考えられているため気にする人も多くはないのですが、日本人はワキガ体質の人が少ないことに加え、ニオイに敏感なためワキガに悩む人も多いとされています。
脱毛は汗腺に働きかける治療ではないため、ワキガが治る直接的な治療法ではありません。
しかし、脱毛をすることによってニオイが軽減することはあり得ます。なぜなら毛には菌が集まりやすく、その菌がアポクリン腺から出る汗を分解してワキガのニオイの元になるからです。
そのため、脱毛することで菌が集まりにくくなり、ニオイが軽減する可能性があるのです。